音楽

音楽が好きだ。

 

私は服にも食にも、あまりお金をかけない。

特別な日などは別だが、基本的にお金を使いたくない。

ケチなのだ。そのくせ見栄っ張りではあるが。

 

そんな私が高い金を出してよかった!と思うものが二つある。

イヤホンと靴だ。

靴については今回は置いておく。

イヤホンは友達と二人で買った。

そもそも私はあまり買う気ではなかったのだが、友達が熱心に選ぶ様子を見て、つい、同じものが欲しくなってしまったのだ。

説明書きを読み、視聴し、散々あれでもないこれでもないと騒いだ末、BOSEのイヤホンを買った。

私の当時の家賃の半分ほどの値だった。

私の家賃が安すぎたのもあるが。

だがそこまでの出費をしても、イヤホンを使うたびに、この買い物は正解だったと満足する。

 

たとえば朝、

私は電車が嫌いだ。

特に朝の電車。

貧血のせいもあるのか、頻繁に具合が悪くなる。

ホームに滑り込む電車。ギチギチに人が詰まっている。心底嫌だが、会社に行くため、働くため、お金を稼ぐため、生きるため。私は電車に乗り込む。冬だが暑い、いや、熱い。熱気がムンムンしている。時間帯もあってか、9割5分がおっさんだ。しかも会社や社会にドス黒い恨みを抱えたおっさん。そんなおっさんに溢れた車内は熱い。一駅もしないうちに息が詰まってくる。大きく深呼吸をしようものなら横のおっさんがすかさず臭ってくる。同じく社会で戦うソルジャーとして、悪くは言いたくないが、おっさんはほとんどが臭い。前もおっさん。後ろもおっさん。右も左もおっさん。繰り返すが、おっさんはほとんどが臭い。

つらい…。

私は満員の中、電車が揺れた隙を狙ってポケットからイヤホンを出す。横のおっさんを刺激しないように縮こまりながら装着する。先程のに付け足すが、おっさんはほとんどが臭いし怒りっぽい。ひじでつつこうものならすぐ舌打ちが飛んでくる。そんなおっさん達に気を使いながら曲を流す。

一瞬の間。音楽が流れ込む。

途端、車内は私から離れて行く。

私が車内から離れたのか、わからないが、とにかく私はこの修羅場から遠く離れることができる。さようなら、おっさん。

 

本当にこのイヤホンには感謝している。

イヤホンにもだが、私は音楽にも感謝している。

 

音楽が好きだ。低音も、高音も。ビートもメロディも。

洋楽も邦楽もクラシックも。歌詞を味わうのもいいが、そのメロディを支える低音やリズムを味わうのも好きだ。盛り上がるサビも好きだが、それ以外の部分も無論好きだ。

バラードもアップテンポもいい。

音楽には意志がある。表現したいことがあって、それを支える音、音、音。全てに意味があるから好きだ。じっくり聞くと、何気なく聞き流していた音がとても大きな効果を生み出していることに気がつく。

それに音楽は常に進化している。毎日のように新曲であふれている。毎日新しい出会いがある。飽きない。飽きられない。