23歳、小学生

私は7時50分に家を出る。

ちょうど近くの小学校の登校時間と丸かぶりしている。

 

小学生ってすげーーーー。

すっげーー邪魔。

私が歩いてようがお構いなしに、私を囲んで鬼ごっことかしてる。

完全に私を盾にして楽しんでる。

小学生のフェイントに私が惑わされてる。

ちょっと恥ずかしいからやめてほしい。

 

ある日は小学生女子がクイズの出し合いっこをしていた。

ほほえましいが横に三人並んでいるから最高に邪魔である。

小学生女子三人の後ろでいつ抜かそうかともたついていると、

そのうちの一人が唐突に出題した。

「じゃあね!わたし!わたしの、よる、着てる、パジャマの柄はなんでしょう!」

しらねーーー。

そんなことより早くどいてほしい。

「1、プリキュア、2、まいめろ…3、うーーーーんとね…」

考えちゃってる時点で3じゃねーよな。

 

今日の朝は、カラスか野良猫がいたずらしたのか、ごみ袋の中身が散乱していた。

それに群がる小学生たち。

「なにこれー!なにこれー!」と騒いでいる。

「だれだよやったのー!」と叫ぶ男の子に、もう一人がこう答えていた。

「カラスに決まってるだろ!だって、こんなの、人だったら……やべーもん!!」

全然理由になってない。

なってないけど妙に納得した。

そうだよな。こんなゴミ袋びりびりにしてる人、完全にやばい奴だもんな。

語彙力の無さがもたらした説得力である。

 

あと、後ろ向きに歩いている小学生男子を発見した。

一番先に出た感想は「いいなーーーー!」だった。

別に、後ろ向きに歩いて出社したいわけではない。

ただ、「後ろ向きに歩いてみたくなったから実践した」

その自由さがうらやましいのだ。

それに、確かに面白いかもしれないのだ。いつも見ている風景が違う方向に流れる。もしかしたら何かにぶつかるかもしれない、という緊張感。一歩一歩出す足も、後ろ向きだと不便だが、その不便さですら面白そうである。

私があと15年ほど若かったら、並んで後ろ向きに歩いていた。

この年だと無理だ。なにが無理かって一言では言えない。大人である、という責任。プライド。恥じらい。

大人になって出来ることも増えたが、同じくらい出来なくなったことも増えた。

明日もきっと、小学生を羨ましく、でも邪魔で疎ましく思いながら出社する。